君があの日、飲み込んだ言葉を探す。
 朝日の差し込む其処は、人の気配は無く、ただただ凄惨に出来事を物語っていた。
 散らかった服や雑貨が、行く手を阻み、鼻を壊すような強烈な鉄の臭い。足を進めるも中々奥までは辿り着けない。
 色々なものを踏み越え、やっとの思いでたどり着いた先には、想像していたよりもおどおどしい光景が広がっていた。一面を染め上げる赤黒い液体。
 そして、部屋の中央に横たわる赤い人影。
 うつ伏せに横たわったその背中には包丁が突き立てられ、あちらこちらに傷が散漫していた。
 手を伸ばして触れた君は冷たく、苦痛を表した醜く恨みがましいとでも言うような表情で一点を見つめていた。実際にはこの瞳に何も映ってはいないのだろうが。

 そこにあったのはただの静寂だった。